ショートショート 小説 HOLY
京都在住のホーリーが「ノンジャンルな創作ショートストーリー」を綴っていきます。                         (2008年03月02日 開設)
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タイムマシーン Short No,36
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西暦2308年。

人類史上初のタイムマシーンが日本で発明された。

 西暦2000年頃に起こった環境問題も科学の力で解決しており、2300年代は大きな戦争や出来事もなく、面白みも刺激的な事も無い時代だった。

 そんな中でのタイムマシーンの発明である。宇宙旅行があたりまえの時代に人々の注目が集まったのは言うまでもなかった。

 その年の10月、5人の飛行士が乗り込んだタイムマシーンが初めて発射された。最初の目的地は恐竜が生息していた中生代だった。

 タイムマシーンは約20分のフライトで問題なく目的の時代に到着した。乗組員はタイムマシーンに積まれていた装甲車でうっそうとしたジャングルの中に降り立った。カメラを作動させながら装甲車は恐竜を求めて走り出した。

 背の高い草や木々が生い茂る道なき道を進んでいくと、急に視界が開け草原が眼下に広がった。広い草原のはるか先を見ると体長が30メートルはありそうな2頭のディプロドクスが高い木の葉っぱを食べていた。

 飛行士たちがそれ以上に驚いたのは左手の広場に停まっているタイムマシーンらしき機体である。数にして数10台、いや数100台は下らなかった。

 それらの機体の側面には「西暦2376年7月1日発 京都市○×区第七小学校」「西暦2465年4月3日発 青森県○×市老人会ご一行様」「西暦2477年8月3日発 ○×工業株式会社様慰安旅行」などと書かれており、日本語以外にもフランス語や英語、中国語で書かれているものもあった。

 駐機スペースは高い壁で囲まれており、周りは観光客と思われる人々々々・・・で大混雑し、お土産物屋さんでは恐竜のぬいぐるみやTシャツ、お饅頭などを売っていた。

 その時、ロケットエンジンを背中に積んだ男性が空中から装甲車の横に下りてきた。彼は「駐機係り員」とプリントされたTシャツを着ていた。
「君ら。あんな所にタイムマシーンを停めたらアカンで。あそこは駐機禁止区域や。すぐにあの下の駐機スペースに移動してちょうだい。それから車の走行も禁止やで。環境が破壊されるやろ。それにしてもアンタら、ようあんな古いタイムマシーンで来れたもんやな。いったい何年から来たんや」
駐機係り員のおじさんは装甲車の中を覗きながら早口でまくしたてた。

「2308年から来ました」
と答えたとたん駐機係り員のおじさんは驚いた顔をして大声をあげた。
「エ〜、ホンマかいな。そんなら初代のタイムマシーンやないか。よう来たなぁ」

 初代のタイムマシーンを駐機スペースへ移動した彼らの周りには人だかりがした。
カメラのフラッシュがたかれ、サインを求められた。恐竜の時代に来た彼らは恐竜を押しのけて人気を独占してしまった。

 未来の観光客たちは見慣れた恐竜に飽きている様子だった。

(おわり)

この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。




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部長の悩み  Short No,35




 今朝、入社二年目のAが五分ほど遅刻してきた。

 部長の私は出社してきたAを怒鳴りつけた。
「何時だと思っているんだ」
「申し訳ありません」
Aは平身低頭だった。

「遅刻するときは連絡しろ」
ウチの会社は住宅リフォームの営業会社だ。
「申し訳ありません」
会社はワンフロアーしか無いので二十人ほどの社員全員が注目していた。

「何か事情があったのか?」
「はい。駅前でお客さんとバッタリ会い、モーニングに誘われたので、情報収集を兼ねて、朝食につきあってきました」
Aは頭を上げずに言った。
「今日は大目に見てやる。でも次は許さんからな」
「はい、申し訳ありませんでした。今後気をつけます」
Aはさらに深々と頭を下げた。
「以後、気をつけるように。さぁ、仕事に戻れ」
「はい」

 Aを叱りつけた部長の私の給料は基本給に役職手当が付くだけなので、月の手取りが二十四万円だ。それに対して成績ダントツトップのAが手にした前年の平均給料は報奨金を入れると月八十九万円だった。

 私の四倍ちかい年収だ。

 私は席について電話をかけているAの背中を見て思った。

「ヤツは“名ばかり平社員”だな・・・」

(おわり)

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宇宙旅行 Short No,34
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 アジアのある国の首脳陣は悩んでいた。

 特別の産物が無いその国は観光収入だけが頼りだったのだが、観光客を狙った犯罪の多発による治安悪化で観光客が激減していたのだ。そこで首脳陣は収入源を求めて新たなプロジェクトを開始した。

 先進国から中古のスペースシャトルを買い取り、宇宙ステーションに三泊するツアーを始めたのだ。自国で育成したシャトルの宇宙飛行士が五人に旅行客が一人のツアーである。旅行費用は一人四十億円。それに加えて宇宙飛行士としての訓練カリキュラム費用が別途必要だった。

 先進国の宇宙旅行は人気があり、順番を待っていると搭乗までに最低でも五年かかってしまった。そこに目をつけたのがこの国だった。頻繁にシャトルを飛ばし、飛行士訓練に費やす時間も四週間に短縮することで旅行者を次から次へとさばいていった。

 その国で出発を翌日に控えたスズキさんは発射台近くにある搭乗センターという宿泊施設にいた。出発までの二日間は打ち合わせを兼ねて、一緒に搭乗する宇宙飛行士と旅行者は搭乗センターに寝泊まりすることになっていた。

 昼食を終えたスズキさんたちは大広間で談笑をしていた。宇宙飛行士たちがスズキさんのカメラについて質問してきた。
「いいカメラだね」
「ありがとうございます」
「一眼レフなのか?」
「ええ、そうです」
「日本製か?」
「ええ」
「明日のフライトにはシャトルに持ち込むのか?」
「ええ」
「ちょっと見せてくれないか」
「ええ、いいですよ」
彼らはスズキさんのカメラを珍しそうに手に取ってファインダーを覗いた。その後はカメラの話題でおおいに盛り上がった。

 夕方。午後の打ち合わせを終えたスズキさん達は大広間でくつろいでいた。
そんなスズキさんのもとに先日強制的に加入させられた旅行保険の保険証書が届いた。大気圏の外へ行くのである、事故が起こることも考えておかなければならない。

 その保険証書を読んでいたスズキさんはある箇所で目が止まった。加入させられた保険には携行品の盗難補償が付いていた。
「宇宙飛行士五人と私だけのツアーなのに何で盗難補償が必要なんだろう」
その時スズキさんはスズキさんのカメラに集中する宇宙飛行士五人の視線を感じた。

(おわり)

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お中元 Short No,33
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 妻とお中元を買いに行った。

 まだ五月なのでスーパーマーケットのお中元特設会場にいる買物客はまばらだった。私も時期的に早いかなと思ったのだが、五月中に予約注文をするとトイレットペーパーがもらえるからと妻に引っ張り出されたのだ。

 会場にはきれいに箱詰めされたお中元の数々が並んでいた。妻といっしょに送り先リストを見ながら商品を選んでいった。と、その時、ある商品に二人の目が止まった。液体がペットボトルのような容器に入れられていた。そのトムソン箱には五百ミリリットルサイズの容器が五本、綺麗に並んでいた。

 商品名は「極上ガソリン」だった。ひと箱五千円。一リッターあたり二千円の計算になる。
「これ、いいかもしれないわね」
妻はガソリンの入った容器を右手で撫でていた。
「そうだな、ありきたりの物よりいいかも」
私たちはリストに書いた商品名を「極上ガソリン」に変更していった。

 スーパーマーケットからの帰り道、私たちはセルフ式のガソリンスタンドに立ち寄った。今日のガソリン価格はリッター千八百円だ。私は三リッターだけ給油した。

 西暦二千二十八年の五月は暑い日が続いているが、道路がすいているので運転席の窓を開ければ風が入ってくる。ガソリン代がリッター千円を超えた五年前あたりから道路の混雑はほとんどなくなったいた。

(おわり)

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名ばかり店長 Short No,32
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 ファストフード店をチェーン展開している会社のある店長が訴訟をおこした。

 会社からは何の権限も与えられず、少ない管理職手当だけで無給の残業を強いられたというのだ。彼は会社に対して残業代の支払いを訴えた。前例があるとはいえ社会的にむつかしい裁判だった。

 裁判長はいけない事と知りながらその裁判について妻に相談した。二流大学の法学部を卒業した彼の妻は多少の法律知識があった。というより、妻は彼の相談を父親に報告することになっていた。

 妻の父親は元法務大臣であり現役の国会議員だった。裁判長の彼が若くして今の地位にあるのも義父のおかげだ。

 社会的に影響のある裁判は妻を通して義父に判断を仰がなければならないことになっていたのだ。


 妻に相談した日から三ヶ月後。
彼は判決文の読み上げの際、「名ばかり店長」を「名ばかり判事」と読み違えてしまった。

(おわり)

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196×年・・・夏、
京都に生まれ、
京都に生きる。

妻と子供を愛するオット・ケン・チチ。
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スポーツ観戦(BOXINGとかMLBとか)。



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